基本的な考え方
第一生命グループは、全従業員が大切にする価値観として第一生命グループ企業行動原則(DSR憲章)を定め、その中の項目として「人権尊重」に取り組むことを宣言し、「第一生命グループ人権方針」を定めています。これに加えて、グループ中核会社の第一生命では「第一生命の行動規範」に人権にかかわる内容を記載し、事業を進めていくうえで、いかなる人権の侵害も容認しない旨を規定しています。
第一生命グループは国際社会の人権尊重に関する動向をいち早く掴むとともに、人権にかかる原則・イニシアチブ・ガイドラインを正しく理解し、あらゆる場において常に相手を思いやる心を持って行動できる従業員の育成に努め、人間の幸せを追求した「人権尊重」という価値観に根ざした企業となることを目指します。
第一生命グループ人権方針
- 1.
序章
- 第一生命グループは、1902年の日本での創業以来、生命保険の提供を中心に、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してきました。
第一生命グループは、社会の期待に沿った事業活動を行うことが求められますが、事業活動が人権に対して影響を及ぼす可能性があることを認識しています。
第一生命グループは、グループ企業行動原則「DSR憲章」において、「人権尊重」を掲げ、各国・各地域において、文化及び慣習を尊重し、その発展に貢献する経営を行い、人権を尊重し、人権啓発に積極的に取組みます。
加えて、ブランドメッセージとして、「いちばん、人を考える」を定めて、いちばん、お客さまから支持される保険グループになるために、誰よりも「人」を考える会社を目指していきます。
この人権方針は、「DSR憲章」で謳っている「人権の尊重」を実践していくにあたり、グローバルに展開する事業において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、どのように行動するかを示したものであり、第一生命グループのグループ会社すべての役員及び従業員に適用されます。本方針は取締役会の承認を得ており、人権問題の未然防止、是正に向けて、社長を委員長とする「グループサステナビリティ推進委員会」が、本方針のグループ内への浸透、本方針に基づく取組みを推進します。また、人事ユニットを担当する役員を委員長とする「グループ人権啓発推進委員会」を置き、人権啓発の取組みを推進します。 - 2.
人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメント
- 第一生命グループは、自社およびビジネスパートナーの事業活動を通じて、当社に関わるステークホルダーの人権を侵害しないことにより、人権を尊重する責任を果たしていきます。
第一生命グループは児童労働や強制労働、人身取引を認めません。
第一生命グループは、事業活動を行う地域で適用される法律を遵守するとともに、国際人権章典、ILOの中核的労働基準を含む、国際的に認知されている人権を尊重し、OECD「多国籍企業行動指針」を支持します。さらに、第一生命グループは、「国連グローバル・コンパクト」や「女性のエンパワーメント原則」の趣旨に賛同し、署名しています。
国際的に認められた基準が各地域における法令よりも高い基準である場合や矛盾が認められる場合は、法令を遵守しつつ、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求します。第一生命グループは、事業活動が与え得る負の影響を防止または軽減するために適切なデューディリジェンスを行うよう努めるとともに、私たちの事業が引き起こす、あるいは助長していることが明らかになった影響については、是正・救済に取組みます。第一生命グループは継続して既存の手続きに人権の視点を組み込んでいきます。 - 3.
役員・従業員に対して
- 第一生命グループはすべての役員・従業員に人権の尊重を求めます。また、どの従業員に対しても平等に働く機会を与え、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するとともに、国籍、人種、民族、年齢、宗教、思想信条、性別、出生、障がいの有無、性的指向、性自認等を含め、いかなる理由でも差別を認めません。採用においては、人権を尊重し、公正な選考に取組みます。加えて、相手の品位を貶めるような言動、及び、身体的・精神的であることを問わず、あらゆる形態のハラスメントを容認しません。
第一生命グループは安全で働きやすい環境を従業員に提供するために、従業員の働くうえでの不安や悩みを解消し、一人ひとりがいきいきと活躍するためのサポート体制を整えていきます。 - 4.
お客さまに対して
- 第一生命グループは、保険商品やサービスの提供に関連する人権への負の影響を防止、軽減するだけでなく、すべてのお客さまの社会的包摂とエンパワーメントを促進することにより、お客さまの人権を尊重するよう努めます。
- 5.
投融資先に対して
- 第一生命グループは投融資にあたって、人権を尊重する取組みを行っていきます。投融資の判断やスチュワードシップ活動においては、人権尊重の視点を組み込んでいきます。
- 6.
ビジネスパートナーに対して
- 第一生命グループの事業活動は、設備や情報システム、外部業務委託等、物品・サービスを提供するサプライヤーや生命保険等の販売を委託する代理店などビジネスパートナーの協力により支えられていますが、ビジネスパートナーに対して、人権の尊重を期待します。
- 7.
地域住民に対して
- 第一生命グループは、事業活動を行う地域住民の人権を尊重するよう努めます。
- 8.
教育と啓発
- 第一生命グループは、人権尊重は企業の経営基盤であるという考えのもと、人権啓発に取組みます。企業を支えるのは人財であり、役員、従業員一人ひとりが人権問題を正しく理解し認識を深めて、日常の活動につなげていくためには、役員、従業員に対する人権啓発の取組みを地道に繰返し実施していくことが重要と考え、グループ内の人権啓発を推進するために、第一生命ホールディングス内に人権啓発業務担当者を配置し、人権に関する様々なテーマを取り上げた各種研修を実施していきます。
- 9.
開示とエンゲージメント
- 第一生命グループは、ウェブサイトを通じて定期的に人権に関する取組みを開示します。第一生命グループは、人権に関する相談や苦情を受付ける適切な体制作りに継続して取組みます。
第一生命グループは、透明性の確保と責任ある対応に努めるため、ステークホルダーとのエンゲージメント(目的を持った対話)を重視します。ステークホルダーから様々な助言をいただいたうえで、本方針を策定していますが、今後もステークホルダーから助言をいただき、必要に応じて本方針に反映させていきます。
(2020年4月制定)
(2023年4月改正)
- ※
「2. 人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメント」に記載の「ILO中核的労働基準」は、「結社の自由、団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃(同一報酬を含む)」の4分野で構成されています。
【ご参考】
人権デュー・ディリジェンスの取組み
第一生命グループでは、「グループ人権方針」に基づいて、人権デュー・ディリジェンスの取組みを推進しています。人権デュー・ディリジェンスは、①方針の策定とコミットメント、②人権リスクの特定と影響の評価、③是正と救済策の実施、④情報開示とモニタリング、の4つのステップを継続して行っていくことですが、それぞれ以下の取組みを定期的に実施しています。
人権デュー・ディリジェンスの取組み(PDCAサイクル)

①方針の策定とコミットメント
「グループ人権方針」を策定し、「グループ人権方針」に記載のとおり様々な人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメントを行っていますが、「グループ人権方針」の取組みを推進していくため、グループ内に以下の推進体制を設置しています。
推進体制
グループサステナビリティ推進委員会 | |
---|---|
委員長 | 社長 |
委員 | 選任された執行役員 |
開催頻度 | 原則年3回および必要に応じて随時 |
協議事項 | 人権を含むサステナビリティに関する環境変化およびグループの取組状況・課題の認識共有、対応策の策定・改廃 |
グループ人権啓発推進委員会 | |
---|---|
委員長 | 人事担当の執行役員 |
委員 | 選任された部門長 |
開催頻度 | 原則年1回および必要に応じて随時 |
協議事項 | 人権啓発に関する環境変化およびグループの取組状況・課題の認識共有、対応策の策定・改廃 |
②人権リスクの特定と影響の評価/③是正・救済策の実施
第一生命では、全所管で、サプライチェーンを含めた事業全般に関わる、人権に関するリスクを特定し、発生可能性や影響度を評価する取組みを定期的に実施しています。人権リスクの特定にあたっては、第一グループが尊重するILO中核的労働基準(「結社の自由、団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃(同一報酬を含む)」)の視点、人身取引の禁止の視点を取り入れています。また自社の従業員、社会的弱者(女性、性的マイノリティ、子供、先住民族、移民、外部労働者等)に対する視点および地域社会との関わりの視点にも留意しています。
人権リスクの特定と評価は、次のプロセスで行い、毎年定期的に繰り返すことで実効性を高めています。
- ①
事業内容や活動地域における人権に関わる環境分析
- ②
既存人権リスクの見直しと新規人権リスクの洗い出し
- ③
人権リスクの影響度、発生可能性の評価
- ④
影響度、発生可能性をもとにした人権リスクの重要度の判定
- ⑤
重要度の高い人権リスクのリスクコントロール状況の評価
- ⑥
リスクコントロール状況を踏まえた改善策の実施
- ⑦
改善策の振返り
2021年度に実施した取組みでは、下表の例のような人権リスクを特定し、是正・救済策を実施しています。
【特定したリスク】
リスク | 是正・救済策 | 関連するステークホルダー |
---|---|---|
商品・制度の開発における分析・検討不足、社会的弱者への差別、配慮不足による商品スキームの瑕疵が発生したことにより実損が発生するリスク |
|
消費者 |
広告制作物の表現が不適切で、消費者に誤解を与えるリスク、人権侵害にあたるリスク |
|
消費者 |
オルタナティブ運用においてESGを投資プロセスに取り込まない投資をすることで、レピュテーションが低下するリスク |
|
投融資先 |
また、多くの所管が人権リスクとして特定したハラスメントについては、コンプライアンス・プログラムの重点課題、および人権啓発の最重点課題と位置付けて、次の是正・救済策に取組んでいます。
- ①
リスクの所在特定
潜在するハラスメントリスクを類型化・可視化し、リスクの所在を特定 - ②
対応策の検討・実施
社員教育の継続実施・内容強化、予兆情報への対応強化 - ③
相談窓口等の対応
安心して相談できる体制、告発者の権利保護 - ④
自分ごと化の推進
各種研修の充実、グループワーク、懲戒処分などの公表・共有化
なお、ハラスメントに限らず、人権に関わる不適事象が発生した場合に備えて、相談窓口を設置し、迅速な問題解決にあたっています。更にグループ内に人権啓発担当者を配置して、以下のとおり定期的な研修の実施、教材の提供などを行い、役員・従業員の人権啓発を推進しています。
研修テーマ | 研修内容 | 具体的実施時期 |
---|---|---|
ハラスメントの未然防止 | ハラスメントは重大な人権侵害、職員の生産性の低下、企業ブランドの低下、膨大な時間と費用の損失に繋がることを認識し、発生を未然に防ぐための言動について理解を深める。 | 支社長経営会議(4月) |
所属別人権研修(5月)(12月) | ||
360度レビュー(8月) | ||
管理職人権啓発研修(12月) | ||
「同和問題」の正しい理解 | 各種調査や直近での発生事例を考慮し、「同和問題」に関する人権研修は継続して実施する。 | 所属別人権研修(5月) |
ノーマライゼーションの推進 | ノーマライゼーションの推進において、もっとも大切なことはお互いに理解し、助け合う「心のバリアフリー」の実践であることから、障がいに対する理解を深め、相手の「人権」を尊重し、相手の立場に立って考え、行動することを啓発する。 | 所属別人権研修(5月) |
D&Iセミナー(10月) | ||
LGBTQ理解の促進 | LGBTQという⾔葉は浸透してきたが、理解を深めること、周囲に当事者がいることを常に意識すること等の大切さを伝える取組みを継続する。 | 所属別人権研修(5月)(9月) |
work with Pride 2021への協賛(11月) | ||
D&Iセミナー(12月) | ||
グループ体制 | 第一生命グループとしての人権啓発態勢の維持・強化を図る。 | グループ会社用所属別研修資料(動画DVD)の提供(5月)(12月) |
「第一生命グループの人権方針」の研修資料(日本語版・英語版)を国内外グループ会社へ提供 |
④情報開示とモニタリング
人権に関する取組みは定期的にホームページなどで開示するとともに、ステークホルダーや外部の有識者のご意見を適宜、「グループ人権方針」や取組みに反映させています。
責任投資の人権取組
グループ中核会社の第一生命では、人権尊重を責任投資の重要テーマとして位置付けており、人権尊重に向けた取組(以下、「人権取組」という)を推進することは企業価値の維持・向上につながると考えています。各投融資先企業の人権リスクや人権取組に関する評価を行い、投融資の判断プロセスに組み込んでいるほか、エンゲージメントを通じて企業の人権取組を促進しています。投融資先企業の人権リスクや人権取組に関する評価の概要はリンク先に掲載しています。
My人権宣言
2021年度に、法務省が提唱した「企業、団体および個人が、人権を尊重する行動をとることを宣言することによって、誰もが人権を尊重し合う社会の実現を目指す」考え方に賛同し、社長名による「Myじんけん宣言」を公表しました。

機関投資家としての取組み
第一生命では、2022年4月に公表した責任投資の基本方針に沿って、人権尊重・ダイバーシティの推進を含む社会課題の解決に資する資産への投融資を通じて、社会へのポジティブ・インパクトの創出に取り組んでいます。また、投融資先企業へのエンゲージメント(対話)と議決権行使を中心としたスチュワードシップ活動においても、人権尊重・ダイバーシティの視点を重視しています。取組みの詳細はグループ中核会社である第一生命保険の責任投資活動報告をご覧ください。