基本的な考え方
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、「第一生命グループ人権方針」を定めています。これに加えて、第一生命グループは、「第一生命グループ行動規範」の中で、「人権の尊重」を謳い、すべての人々の人権を尊重し、人権啓発にも積極的に取り組むこと、いかなる理由でも差別を行わず、またその行為を容認しないことを規定しています。
第一生命グループは国際社会の人権尊重に関する動向をいち早く掴むとともに、人権に関わる原則・イニシアチブ・ガイドラインを正しく理解し、あらゆる場において常に相手を思いやる心を持って行動できる従業員の育成に努め、人間の幸せを追求した「人権尊重」という価値観に根ざした企業となることを目指します。
第一生命グループは、人権尊重に向けた取組みに関する年次報告書として、2024年度から人権レポートを発行することとしました。
【ご参考】
第一生命グループ人権方針
- 1.
序章
- 第一生命グループは、1902年の日本での創業以来、生命保険の提供を中心に、人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献してきました。
第一生命グループは、社会の期待に沿った事業活動を行うことが求められますが、事業活動が人権に対して影響を及ぼす可能性があることを認識しています。
第一生命グループは、「第一生命グループ行動規範」において、「人権の尊重」を掲げ、各国・各地域において、文化及び慣習を尊重し、その発展に貢献する経営を行い、すべての人々の人権を尊重し、人権啓発に積極的に取組みます。
加えて、グループ企業理念の中のバリューズのひとつとして、「いちばん、人を考える」を定めて、「お客さま」「従業員」「株主」「取引先」「地域」など、企業活動を通じて関わるあらゆる「人」のことを誰よりも真剣に考えます。
この人権方針は、「第一生命グループ行動規範」で謳っている「人権の尊重」を実践していくにあたり、グローバルに展開する事業において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、どのように行動するかを示したものであり、第一生命グループのグループ会社すべての役員及び従業員に適用されます。
本方針は取締役会の承認を得ており、人権問題の未然防止、是正に向けて、Chief Sustainability Officerを委員長とする「グループサステナビリティ推進委員会」が、本方針のグループ内への浸透、本方針に基づく取組みを推進します。また、人事ユニットを担当する役員を委員長とする「グループ人権啓発推進委員会」を置き、人権啓発の取組みを推進します。 - 2.
人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメント
- 第一生命グループは、自社およびビジネスパートナーの事業活動を通じて、当社に関わるステークホルダーの人権を侵害しないことにより、人権を尊重する責任を果たしていきます。
第一生命グループは児童労働や強制労働、人身取引を認めません。
第一生命グループは、事業活動を行う地域で適用される法律を遵守するとともに、国際人権章典、ILOの中核的労働基準を含む、国際的に認知されている人権を尊重し、OECD「多国籍企業行動指針」を支持します。さらに、第一生命グループは、「国連グローバル・コンパクト」や「女性のエンパワーメント原則」の趣旨に賛同し、署名しています。
国際的に認められた基準が各地域における法令よりも高い基準である場合や矛盾が認められる場合は、法令を遵守しつつ、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求します。第一生命グループは、事業活動が与え得る負の影響を防止または軽減するために適切な人権デュー・ディリジェンスを行うよう努めるとともに、私たちの事業が引き起こす、あるいは助長していることが明らかになった影響については、是正・救済に取組みます。第一生命グループは継続して既存の手続きに人権の視点を組み込んでいきます。 - 3.
役員・従業員に対して
- 第一生命グループはすべての役員・従業員に人権の尊重を求めます。また、どの従業員に対しても平等に働く機会を与え、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進するとともに、国籍、人種、民族、年齢、宗教、思想信条、性別、出生、障がいの有無、性的指向、性自認等を含め、いかなる理由でも差別を認めません。採用においては、人権を尊重し、公正な選考に取組みます。加えて、相手の品位を貶めるような言動、及び、身体的・精神的であることを問わず、あらゆる形態のハラスメントを容認しません。
第一生命グループは安全で働きやすい環境を従業員に提供するために、従業員の働くうえでの不安や悩みを解消し、一人ひとりがいきいきと活躍するためのサポート体制を整えていきます。 - 4.
お客さまに対して
- 第一生命グループは、保険商品やサービスの提供に関連する人権への負の影響を防止、軽減するだけでなく、すべてのお客さまの社会的包摂とエンパワーメントを促進することにより、お客さまの人権を尊重するよう努めます。
- 5.
投融資先に対して
- 第一生命グループは投融資にあたって、人権を尊重する取組みを行っていきます。投融資の判断やスチュワードシップ活動においては、人権尊重の視点を組み込んでいきます。
- 6.
ビジネスパートナーに対して
- 第一生命グループの事業活動は、設備や情報システム、外部業務委託等、物品・サービスを提供するサプライヤーや生命保険等の販売を委託する代理店などビジネスパートナーの協力により支えられていますが、ビジネスパートナーに対して、人権の尊重を期待します。
- 7.
地域住民に対して
- 第一生命グループは、事業活動を行う地域住民の人権を尊重するよう努めます。
- 8.
教育と啓発
- 第一生命グループは、人権尊重は企業の経営基盤であるという考えのもと、人権啓発に取組みます。企業を支えるのは人財であり、役員、従業員一人ひとりが人権問題を正しく理解し認識を深めて、日常の活動につなげていくためには、役員、従業員に対する人権啓発の取組みを地道に繰返し実施していくことが重要と考え、グループ内の人権啓発を推進するために、第一生命ホールディングス内に人権啓発業務担当者を配置し、人権に関する様々なテーマを取り上げた各種研修を実施していきます。
- 9.
開示とエンゲージメント
- 第一生命グループは、ウェブサイトを通じて定期的に人権に関する取組みを開示します。第一生命グループは、人権に関する相談や苦情を受付ける適切な体制作りに継続して取組みます。
第一生命グループは、透明性の確保と責任ある対応に努めるため、ステークホルダーとのエンゲージメント(目的を持った対話)を重視します。ステークホルダーから様々な助言をいただいたうえで、本方針を策定していますが、今後もステークホルダーから助言をいただき、必要に応じて本方針に反映させていきます。
(2020年4月制定)
(2024年4月改正)
- ※
「2. 人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメント」に記載の「ILO中核的労働基準」は、「結社の自由、団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃(同一報酬を含む)」の4分野で構成されています。
人権デュー・ディリジェンスの取組み
第一生命グループでは、「グループ人権方針」に基づいて、人権デュー・ディリジェンスの取組みを推進しています。人権デュー・ディリジェンスは、①方針の策定とコミットメント、②人権リスクの特定と影響の評価、③人権リスクの防止・軽減策と人権侵害の是正・救済策の実施、④情報開示とモニタリング、の4つのステップを継続して行っていくことですが、それぞれ以下の取組みを定期的に実施しています。
人権デュー・ディリジェンスの取組み(PDCAサイクル)
①方針の策定とコミットメント
「グループ人権方針」を策定し、「グループ人権方針」に記載のとおり様々な人権と関連する基準・イニシアチブへのコミットメントを行っていますが、「グループ人権方針」の取組みを推進していくため、グループ内に以下の推進体制を設置しています。
推進体制
グループサステナビリティ推進委員会 | |
---|---|
委員長 | Chief Sustainability Officer |
委員 | 選任された執行役員 |
開催頻度 | 原則年3回および必要に応じて随時 |
協議事項 | 人権を含むサステナビリティに関する環境変化およびグループの取組状況・課題の認識共有、対応策の策定・改廃 |
グループ人権啓発推進委員会 | |
---|---|
委員長 | 人事担当の執行役員 |
委員 | 選任された部門長 |
開催頻度 | 原則年1回および必要に応じて随時 |
協議事項 | 人権啓発に関する環境変化およびグループの取組状況・課題の認識共有、対応策の策定・改廃 |
②人権リスクの特定と影響の評価
リスクの特定、影響の評価のプロセス
第一生命では、全所管で、サプライチェーンを含めた事業全般に関わる、人権に関するリスクを特定し、発生可能性や影響度(深刻度)を評価する取組みを定期的に実施しています。人権リスクの特定にあたっては、第一グループが尊重するILO中核的労働基準(「結社の自由、団体交渉権の承認」「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「差別の撤廃(同一報酬を含む)」)の視点、人身取引の禁止の視点を取り入れています。また自社の従業員、社会的弱者(女性、性的マイノリティ、子供、先住民族、移民、外部労働者等)に対する視点および地域社会との関わりの視点にも留意しています。
人権リスクの特定と評価は、次のプロセスで行い、毎年定期的に繰り返すことで実効性を高めています。
- ①
事業内容や活動地域における人権に関わる環境分析
- ②
既存人権リスクの見直しと新規人権リスクの洗出し
- ③
人権リスクの影響度、発生可能性の評価
- ④
影響度、発生可能性をもとにした人権リスクランクの判定
- ⑤
ランクの高いリスクのコントロール状況の評価
- ⑥
リスクコントロール状況を踏まえた防止・軽減策の実施
- ⑦
軽減策の振返り
特定した人権リスクとリスク評価
2022年度に、事業部門(分野)ごとに特定を行った人権リスクについて、以下のとおり影響度(深刻度)と発生可能性の2軸に基づく社内定義に応じて評価して重要な人権リスクと判定したもの、および事業エリアや事業内容から今後の事業展開において重要な人権リスクと想定されるものは下表のとおりとなります。なお、各リスクに関連するステークホルダーは以下の記号で表示しています。
【ステークホルダー】
- ○
=自社(子会社を含む)
- ☆
=合弁会社
- ◎
=お客さま(保険関係者)
- ◇
=ビジネスパートナー(業務委託先、代理店等、サプライチェーン上の関係者を含む)
- □
=投融資先、不動産運用先(サプライチェーン上の関係者を含む)
- △
=その他ステークホルダー(採用応募者、サプライチェーン上の関係者等)
人権リスク | 保険 | 運用 | 事業管理 | ||||||
商品開発 | 宣伝・募集 | 引受 | 保全・支払 | 投融資 | 不動産 | 労務管理 | 採用 | その他※ | |
社会的弱者(障がい者、高齢者、性的マイノリティ、外国人等)への人権侵害 | ◎ | ◎ | ◎◇ | ◎◇ | □ | □ | ○☆ | △ | △ |
差別(国籍、人種、民族、年齢、思想信条、性別、出生等によるもの) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | □ | □ | ○☆ | △ | △ |
過重労働・長時間労働の発生 | ◇ | ◇ | □ | □ | ○☆ | ||||
勤務時間管理の不適・賃金不払 | ◇ | ◇ | □ | □ | ○☆ | ||||
労働安全衛生管理の不適 | ◇ | ◇ | □ | □ | ○☆ | ||||
不適切な人事運営(評価、処遇、異動等) | ◇ | ◇ | □ | □ | ○☆ | ||||
採用、退社における不適切な対応 | ◇ | ◇ | □ | □ | ○☆ | △ | |||
不適切な個人情報の取得・利用 | ◎ | ◎◇ | ◎◇ | □ | □ | ○☆ | △ | △ | |
個人情報の流出・紛失 | ◎ | ◎◇ | ◎◇ | □ | □ | ○☆ | △ | ◎△ | |
ハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ等)の発生 | ◎○ | ◎○◇ | ◎○◇ | □ | □ | ○☆ | △ | ||
コロナ感染拡大による健康被害・人権侵害 | ◎○ | ◎○◇ | ◎○◇ | □ | □ | ○☆ | |||
AI活用による人権侵害 | ◎ | ◎ | ◎◇ | ◎◇ | □ | □ | ○☆ | △ | ◎△ |
児童労働 | ◇ | ◇ | □ | ○☆ | |||||
人身取引 | ◇ | ◇ | □ | ○☆ | |||||
結社の自由・団体交渉権における不適切対応 | ◇ | ◇ | □ | ○☆ | |||||
居住・移転の権利における不適切な対応 | □ | □ | ○☆ |
- ※
「その他」としては、経営企画、総務、内部統制、システム管理等の事業があります。
③人権リスクの防止・軽減策と人権侵害の是正・救済策の実施
ステークホルダーごとの人権リスクの防止・軽減策
人権に関わるステークホルダー | ||||||
自社・子会社内 | 合弁会社内 | お客さま | ビジネスパートナー | 投融資先 | その他ステークホルダー | |
主な防止・軽減策 |
|
|||||
|
|
|||||
|
|
|
|
|||
軽減策・救済措置対象拠点 |
第一生命ホールディングス、第一生命グループ会社 国内外42社、第一生命 国内92拠点(2024年3月末現在) |
人権啓発研修の実施
人権侵害の防止に向けて、グループ内に人権啓発担当者を配置して、以下のとおり定期的な研修の実施、教材の提供、理解度確認テストなどを行い、役員・従業員の人権啓発を推進しています。
研修テーマ | 研修内容 | 実施時期 |
ハラスメントの未然防止 | ハラスメントは重大な人権侵害であり、職員の生産性の低下、企業ブランドの低下、膨大な時間と費用の損失等に繋がることを伝え、発生を未然に防ぐための言動について理解を促進する。 | 所属長向け研修(4月、10月) |
所属別人権研修(4月、12月) | ||
360度レビュー(8月) | ||
管理職・機関長人権啓発研修(12月) | ||
新任機関長・副支社長・業務統轄部長向け研修(3月) | ||
「同和問題」の正しい理解 | 各種調査や直近での発生事例を踏まえて、現在でも行われている人権侵害として、「同和問題」に関する正しい理解を促進する。 | 所属別人権研修(5月、12月) |
新任機関長・副支社長・業務統轄部長向け研修(3月) | ||
ノーマライゼーションの推進 | ノーマライゼーションの推進において、もっとも大切なことは、お互いに理解し助け合う「心のバリアフリー」の実践であることから、障がいに対する理解を深め、当事者の人権を尊重し、当事者の立場に立って考え、行動することを啓発する。 | 所属別人権研修(5月、12月) |
新任機関長・副支社長・業務統轄部長向け研修(3月) | ||
LGBTQ理解の促進 | LGBTQという⾔葉は浸透してきたが、理解を深めること、周囲に当事者がいることを常に意識すること等の大切さを伝える。 | 所属別人権研修(5月、12月) |
work with Pride 2022への協賛(11月) | ||
社員向けセミナー(9月) | ||
新任機関長・副支社長・業務統轄部長向け研修(3月) | ||
グループ体制 | 第一生命グループとしての人権啓発態勢の維持・強化を図る。 | グループ会社用所属別研修資料(動画DVD)の提供(5月、12月) |
「第一生命グループの人権方針」の研修資料(日本語版・英語版)の国内外グループ会社への提供(11月) |
相談窓口の設置
第一生命グループでは、法令違反などのコンプライアンスに係る事項についての社内相談窓口を設置するとともに、経営から独立した社外相談窓口(社外弁護士事務所)を設置しています。相談窓口では、ハラスメントその他の人権問題に関わる事項も受付けています。
人権侵害の是正・救済
2022年度の相談窓口での受付件数は以下リンク先のとおりとなっており、このうち、人権に関する主な相談内容は以下のとおりですが、通報者保護を徹底したうえで、下図のプロセスによる対応を行い、被害者の救済、原状回復、再発防止等につなげています。また各所管で人権デュー・ディリジェンスを実施することで、自浄効果を発揮して顕在化させた人権侵害事案についても、同様なプロセスで対応を行っています。
【人権に関わる主な相談内容】
- セクシュアル・ハラスメント
- パワー・ハラスメント
- マタニティ・ハラスメント
- プライバシーの侵害
④情報開示とモニタリング
人権に関する取組みは定期的にホームページなどで開示するとともに、ステークホルダーや外部の有識者のご意見を適宜、「グループ人権方針」や取組みに反映させています。
人権方針の改正
外部有識者や人権イニシアチブ代表者とのダイアログを経て、2020年4月に「グループ人権方針」を制定していますが、人権に関わるステークホルダーや外部有識者のご意見等を踏まえて、制定後に行った「グループ人権方針」の改正内容は以下のとおりです。
改正年月 | 主な改正点 |
2022年4月 |
|
2023年4月 |
|
人権啓発推進イニシアチブへの参加
第一生命は東京人権啓発企業連絡会の会員企業として、他の会員企業と共同して人権啓発活動を推進しています。また、同会を通じて様々な人権啓発推進イニシアチブが主催する集会、セミナー等に参加して、人権に関わるステークホルダーや有識者からの生の声を聴き、関連情報の収集を行うことにより、事業を取り巻く人権問題を認識したうえで、必要な対応を適時適切に行うとともに、従業員の人権に関する知識のアップデート、人権尊重に関する理解の促進に努めています。
豪州現代奴隷法への対応
豪州における第一生命グループ会社であるTALは、2018年に施行された豪州現代奴隷法に基づき、2020年以降、毎年声明文を豪州政府に報告しています。今後も確実に報告を行うとともに、サプライチェーンを含む事業全体で、強制労働や人身取引が発生しないよう取組みます。
責任投資の人権取組み
グループ中核会社の第一生命では、人権尊重を責任投資の重要テーマとして位置付けており、人権尊重に向けた取組み(以下、「人権取組み」という)を推進することは企業価値の維持・向上につながると考えています。各投融資先企業の人権リスクや人権取組みに関する評価を行い、投融資の判断プロセスに組み込んでいるほか、エンゲージメントを通じて企業の人権取組みを促進しています。投融資先企業の人権リスクや人権取組みに関する評価の概要はリンク先に掲載しています。
機関投資家としての取組み
第一生命では、2022年4月に公表した責任投資の基本方針に沿って、人権尊重・ダイバーシティの推進を含む社会課題の解決に資する資産への投融資を通じて、社会へのポジティブ・インパクトの創出に取り組んでいます。また、投融資先企業へのエンゲージメント(対話)と議決権行使を中心としたスチュワードシップ活動においても、人権尊重・ダイバーシティの視点を重視しています。取組みの詳細はグループ中核会社である第一生命保険の責任投資活動報告をご覧ください。