社外取締役インタビュー 社外取締役 前田 幸一

社外取締役インタビュー

グローバルに通用する、
質の高いガバナンス体制の確立に
貢献していきます。

社外取締役前田 幸一

グループの持続的成長を担うガバナンス体制

第一生命グループのコーポレートガバナンスの特徴はどのようなものですか。

当社グループは3年前の2016年10月、持株会社体制に移行し、同時に監査等委員会設置会社となりました。こうした体制に移行した大きな狙いは、これからの成長戦略を踏まえ、持株会社の取締役会がグループ全体の成長加速に向けて機動的な事業展開と資源配分を可能にすることと、過半数を社外委員で構成する監査等委員会が取締役会に対する監査・監督機能を担い、取締役会がモニタリング・ボードとしての機能をしっかりと発揮することにあったと思います。これは、それまでのグループ最大の事業会社である第一生命を中心とした経営体制から進化させ、持続的成長に向けたグループ経営全体を見据えた制度設計であり、持株会社体制のスタート時からしっかりしたガバナンス体制を整えていたと思います。

前田取締役が社外取締役に就任されて3年近く経ちましたが、当社グループのコーポレートガバナンスの進化をどのように評価していますか。

持株会社体制移行当初は、事業会社ではなく持株会社としての取締役会のあり方について、執行側、監督側ともに悩みながら試行錯誤してきましたが、中期経営計画「CONNECT 2020」の策定や海外のM&Aなどに関する議論を通じて、執行と監督とが適切な緊張感を保ちながら、成長実現に向けたグループ経営体制の強化が図られてきたのではないかという実感を持っています。監査等委員会設置会社としても、監督機能によりフォーカスしたうえでの当社流の仕組み・スタイルが根付いてきた3年間であったと認識しています。

一方で、今後保険業界に起こり得る環境変化などを踏まえると、当社はその可能性を見通した上で、持株会社のメリットをこれまで以上に発揮し、持続的成長に向けたさまざまな手を臨機応変に打っていく必要があると考えています。将来の事業拡大に対応した国内外でのガバナンスのさらなる整備・高度化なども今後必要になってくると考えています。

多様な視点からの建設的な議論で取締役会の実効性を向上

社外取締役の構成について教えてください。

当社の取締役会は16名中7名が社外取締役ですが、社外取締役のバックグラウンドは多種多彩であり、会社経営や金融、法務、財務などそれぞれの専門分野で高い見識や豊富な経験を有する方で構成されています。当社グループが国内外で展開するさまざまな戦略について、求められる多様な視点でこれらを評価・判断できるという意味では、非常にバランスの取れた人選であると思います。

社外取締役はどのように取締役会での議論に参加していますか。

取締役会では毎回、社外取締役の多様な知見の組み合わせから、活発な議論が生まれています。社外取締役の発言も多く、多角的な視点での審議や建設的な議論が当社の取締役会における実効性の向上につながっていると感じています。

また、取締役会の実効性をより高めるために、社外取締役としてさまざまな課題を提起しており、取締役会での議論のフォローを行う体制の確立や、各委員会と取締役会との連携強化、執行部門での議論のフィードバックが実現するなど、絶えざる改善につながっていると思います。

こうした活発な議論の前提となる社外取締役向けの情報提供も充実しています。取締役会開催前の資料提供や説明のほか、経営課題に関する勉強会、社内行事や各地の事業所の視察など多岐にわたる形で情報提供がなされています。2018年度は、第一生命ベトナムを視察して、現地で経営層と意見交換したり、営業オフィスを訪問したりしましたが、日本国内で蓄積してきた知見やノウハウが活かされ、現地社員が高い意欲を持って取り組んでいることがよくわかりました。海外視察も含め、現場に直接足を運び会社が進める施策を実感することは非常に有意義であり、取締役会での議論の深まりにつながっていると思います。

指名諮問委員会と報酬諮問委員会について教えてください。

私は指名諮問委員会と報酬諮問委員会の議長を務めていますが、両委員会ともに案件の審議時には、背景や論点、課題などを明確にしたうえで、株主をはじめとするステークホルダーの視点も意識した議論を通じて、判断していくことを心がけています。また、諮問委員会と取締役会に横串を通すために、2018年度より両委員会でなされた議論のポイントを私から取締役会に報告しており、今後も取締役会との連携を充実させていく予定です。このほか2018年度は、報酬諮問委員会では、業績と株価に対する役員の責任をより明確にするため、取締役へのインセンティブとして、業績報酬制度を改定するとともに、譲渡制限付株式報酬を導入することとしました。また、指名諮問委員会では、取締役会構成のあり方などにつき議論してきましたが、加えて今後はサクセッションプラン(後継者計画)などについての議論も深めていく考えです。

海外展開を支えるハード・ソフト両面での取組みが進展

海外M&Aに関するガバナンス体制について教えてください。

これまで当社グループは、持株会社体制のメリットを活かして、M&Aなどの成長戦略を着実に進めてきました。最近では、プロテクティブによるLiberty Life社とGreat-West社の既契約ブロック買収や、TALによるSuncorpグループの生保事業買収といった大きなM&A案件がありました。こうした海外でのM&Aを進める際のデューディリジェンス、資本管理、リスク管理といったハード面の枠組みはよくできており、社外取締役も早い段階から議論に参加しています。

また、私自身は買収そのものと同様に、買収後のPMI(Post Merger Integration)にも注目しています。どういうプロセスで統合を進め、どの時期に成果を出すのかなど、元々の買収目的が達成されているかを確認することは、将来、新たな案件が提案された際の判断にも役立つことだと思います。

さらに海外展開を進めるうえで重要なことは何ですか。

海外生保事業の現地経営層と話してみると、当社グループのマインドやカルチャーを理解しようとする意思、グループへの貢献に向けた前向きな姿勢を感じます。海外生保事業の成功には、ガバナンス上のハード面の取組みだけではなく、このようにカルチャーを合わせていくというソフト面の積み重ねも非常に大事だと思います。

生命保険事業は、各国の法令・社会保障制度などに基づくローカルなビジネスですが、当社グループが日本で培ったノウハウやシステムには、グローバルで共通化できる部分も多いと考えています。そこで、海外グループ会社の経営層が集うグローバル・リーダーズ・コミッティを設け当社グループの方針・理念、知見を共有するとともに、実務レベルの連携や課題解決を図るグループ・イニシアティブ・タスクフォースをスタートさせました。時間はかかりますが、こうした枠組みを通じて人と人とがつながり、企業カルチャーが共有されていくのは、グループとしてとても良い施策だと思います。

QOL向上への貢献を目指すグループの取組みを支援

社外取締役として、QOL向上への貢献をどのようにサポートしていくお考えですか。

中期経営計画「CONNECT 2020」において当社グループは、人々の「QOL(Quality of Life)向上」に貢献していくことを掲げました。生命保険事業は元来、人々の生活の安定に資する公共性の高い事業ですが、これらに加え、資産形成や健康増進、さらには地域・社会の持続性確保といった領域での貢献を本格化させようとしています。しっかりとした環境認識に基づき、お客さまや社会の新たなニーズに「一生涯のパートナー」としての強みを活かして対応していくという意味では極めて意義のあるチャレンジであると考えています。

こうした取組みは、保障の提供や迅速な保険金のお支払いだけでなく、健康増進の後押しなどでもお客さまに寄り添う取組みを行いつつ、デジタル技術の活用や、さまざまなパートナーシップの展開などを通じ、お客さまをさらにバックアップすることにより、より多様な社会課題の解決に貢献できる企業へ進化しようとしていることの表れだと思います。

ただ、環境変化が今後ますます激しくなることが予想されるなかで、こうした取組みに関する意思決定には、前例にとらわれない是々非々での判断とともに、今まで以上の機動性やスピード感が必要になってきています。同様にグループのガバナンスにも、グローバルに通用する、より洗練された仕組みが求められてくるはずです。

今後の持続的成長に向けては、こうした点をさらに進化させていくことが当社の課題であると考えます。持株会社としてのメリットを十分に活かし切るためにも、社外取締役として、こうした進化に必要なことを常に考え、できる限り貢献していきたいと考えています。