気候変動への取組み
~TCFDへの対応~

課題認識

2016年のパリ協定発効により、環境問題とりわけ気候変動への対応は国際社会全体で取り組む課題であるとの認識が高まっています。グローバルに生命保険事業およびアセットマネジメント事業を展開する第一生命グループにとっても、気候変動はお客さまの生命や健康、企業活動、社会の持続可能性などに大きな影響を与えうる重要な経営課題と認識しています。

こうした認識のもと、中期経営計画「CONNECT 2020※1」にて、気候変動への対応を継続的に強化する領域の一つと位置付け、各種の取組みを推進しています。また、気候変動が及ぼすリスクと機会の評価によって経営のレジリエンス(強靭性)を強化するとともに、その状況の開示によるステークホルダーとの健全な対話を通じた企業価値の向上を図るために、2018年9月にTCFD※2提言への賛同を表明しました。

※1第一生命ホールディングス取締役会にて決定(2018年3月)
※2Task Force on Climate-related Financial Disclosures

ガバナンス/リスク管理態勢

当社グループは、利益・資本・リスクの状況に応じた戦略に基づき、資本効率・企業価値の向上を目指すERMを推進しており、その一環として、経営に重要な影響を及ぼす予見可能なリスクを特定し、これらのリスクを踏まえた事業計画の策定を推進することで、予兆段階から適切に対処するリスク管理を実施しています。気候関連リスクについても、環境変化などにより当社グループに将来重大な影響を与える可能性のあるリスクの一つと位置づけ、リスク管理部門・経営企画部門の担当役員などを委員とする「グループERM委員会」が分析・評価を行ったうえで、定期的に経営会議、取締役会に報告し、モニタリングを行うこととしています。※3

また、第一生命では、ESG投資のグローバルスタンダードであるPRI※4より年次アセスメントを受けており、その結果を踏まえた取組方針を社外有識者が過半を占める「責任投資委員会」において議論し、経営会議に報告することで、ESG投資の持続的なレベルアップを図っています。※5

ガバナンス/リスク管理態勢

※3リスク管理の詳細は、
https://www.dai-ichi-life-hd.com/about/control/in_control/administer.html 参照
※4Principles for Responsible Investment(2005年に国連が公表した責任投資原則)
※5責任投資の推進態勢の詳細は
https://www.dai-ichi-life.co.jp/dsr/investment/ri.html 参照

ガバナンス/リスク管理態勢

図:ガバナンス/リスク管理態勢

戦略

(1)気候関連のリスク・機会、当社事業への影響
(グループ中核子会社の第一生命における試行的シナリオ分析の結果)

ビジネスに影響を及ぼす主なリスク・機会と影響(第一生命)

気候関連のリスク 事業への主な影響
物理的リスク
  • 慢性物理的リスク(平均気温や海面の上昇など)と急性物理的リスク(台風・洪水など異常気象の増加)で構成、気候変動による「物理的」変化に関するリスク

→各国における気候変動対策が十分なされずに長期的に気温が大幅に上昇するシナリオ下において影響が大きくなる可能性あり

事業への主な影響

  • 温暖化に伴う熱中症や感染症の増加による保険金・給付金支払額の増加
  • 台風などによる水害発生の増加に伴う保険金・給付金支払額の増加
移行リスク
  • 市場・技術リスク(消費行動の変化・新規技術への投資失敗など)、政策・法規制リスク(温室効果ガス排出の規制強化など)、評判リスク(業種への非難・消費者選好の変化など)で構成、低炭素社会への「移行」に伴うリスク

→新技術開発、炭素回収・貯蔵技術の活用などの気候変動対策が十分に行われ長期的な気温上昇が抑制されるシナリオ下において影響が大きくなる可能性あり

事業への主な影響

  • 炭素税導入、市場・社会環境変化による資産の毀損、新技術開発、消費者行動の変化への対応などの環境変化への対応が不十分な企業への投融資価値の低下
気候関連の機会 事業への主な影響
資源効率、製品・サービス市場など
  • 気候変動問題の解決に資する市場の拡大など、気候変動に伴う企業の収益機会

事業への主な影響

  • 再生可能エネルギー事業など、気候変動問題解決に資する事業・企業への投融資機会の増加
  • 資源効率の高い事業インフラの導入による事業コストの低減

(2)具体的な取組み

第一生命は、事業会社および機関投資家として、気候変動に対する事業のレジリエンスの強化を図るとともに、金融市場を含む社会全体のレジリエンス向上を促しています。

図:具体的な取組み 図:具体的な取組み

事業会社としての取組み

気候変動が生命保険事業に与える影響の調査などを通じ、生命保険事業におけるレジリエンスを強化していきます。またCO₂排出量削減取組みに加え、環境保護に関する取組みなどを通じて社会全体のレジリエンス向上への貢献も図っていきます。

生命保険事業の
レジリエンス
  • 日本における熱中症・感染症による保険金等支払額の増加について暫定的に試算
  • 今後は、日本以外の地域も含めほかの影響についても調査を継続
社会全体の
レジリエンス
(CO₂削減など)
  • 2011年よりCO₂排出量削減目標を設定。目標達成に向け、省エネ機器の導入などを通じ、事業所活動に伴うエネルギー使用量の削減を推進
  • 再生可能エネルギーの導入(2019年4月、東京・日比谷本社ビルの電力を、すべて水力発電由来の再生可能エネルギーへ切り替え、年間約3,600tのCO₂排出量を削減見込み。)
  • CO₂を排出しない持続可能な都市「ゼロエミッション東京」を目指す東京都の取組みに協力するため、東京都に対し、キャップ&トレード制度に基づくCO₂排出量の超過削減分であるクレジット41,966tを寄付

機関投資家としての取組み

気候変動が中長期的な投資パフォーマンスに影響を与えうる要素であるとの認識のもと、気候関連リスクの分析を高度化し、その抑制および収益機会の獲得・社会全体のレジリエンス強化に向けた取組みを推進しています。

資産運用の
レジリエンス
  • 低炭素社会への移行により投融資先の資産価値が低下するリスクを踏まえ、石炭火力発電プロジェクトファイナンスには原則として投融資しない方針(これまでも当該事業への投融資実績なし)
  • 気候変動に対する保有資産のレジリエンスを高めるため、企業評価プロセスに気候変動要素を導入
社会全体の
レジリエンス
  • 気候変動問題の解決に資する資産などに対し積極的に投資
  • 投資先企業との対話活動を通じてTCFD提言に基づく情報開示を促進

●再生可能エネルギー・プロジェクトファイナンス

2013年度より、国内外の太陽光・風力・バイオマス発電事業に対して、積極的に投資を行っており、これまでの投資額は累計1,000億円を上回ります。

●国際開発金融機関のグリーンボンドなどへの投資

2019年6月、世界銀行グループの国際復興開発銀行(IBRD)が発行するグリーンボンドと欧州復興開発銀行(EBRD)が発行する環境保全債に、それぞれ約108億円投資しました。

●国内生命保険会社初となる「Climate Action 100+」への参加

温室効果ガス排出量の多い企業に対し、排出量削減に向けた取組みやその情報開示などについて建設的対話を行う、機関投資家の世界的イニシアティブに参加しました。

Climate Action 100+

指標と目標

事業規模の大きい第一生命では、CO₂排出量について、中長期的な削減目標として、2030年度40%削減、2050年度70%削減(ともに2013年度比)を設定しています。また、当社グループとしては、CO₂排出量の前年度比1%削減を目標に取り組んでおり、2018年度の実績は、約15万5,300t(Scope1:12,500t、Scope2:142,800t)と、目標である前年度比1%削減のペースを維持しました。

●国内生損保業界初となる「RE100※」への加盟

地球温暖化の防止に向け再生可能エネルギーの利用拡大を推進する観点から、再生可能エネルギーの100%化を目標に掲げる国際イニシアティブに、第一生命として加盟しました。

※RE100(再生可能エネルギー100%を意味する「Renewable Energy 100%」の頭文字)」は、国際的なNGO団体であるクライメイト・グループの主導により2014年発足。CDP(気候変動への対応に関する情報を企業より集約し、投資家などへ提供する非営利団体)と連携して運営。事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標としており、世界の主要企業など190社以上(2019年8月時点)が加盟。

RE100

TOPICS環境保護に関する取組み例

「都市の緑3表彰」の特別協賛

第一生命では、1990年より、都市緑化への寄与を目的に「緑の環境プラン大賞」を創設し、緑化取組みを支援しています。現在は「緑の都市賞」「屋上・壁面緑化技術コンクール」を加えた3賞を特別協賛しており、2018年までに助成を行った緑地は約200件に上り、こうした取組みにより、2000年、2014年に国土交通省より「都市緑化功労者 国土交通大臣表彰」を受賞しました。

マングローブの植樹

パニン・第一ライフ(インドネシア)では、CO₂吸収量が多く、海岸線を浸食から保護する働きを持つマングローブの植樹活動を行っています。また、植林活動を行う団体のスポンサーになるなど、自然環境保護活動にも力を入れています。

森林保全

プロテクティブ(米国)では、自然環境保護団体と協働し、アラバマ州における水環境や生態系の保全、自然の美しさを保持するための活動を行っています。