ガバナンスで日本を索引するロールモデルになるために

日本版スチュワードシップ・コードに続きコーポレートガバナンス・コードが策定されたことを受け、第一生命は機関投資家と上場会社という二つの立場からガバナンスと向き合うことが求められています。そこで、当社が果たすべき役割について、グローバル企業のガバナンスにもお詳しいEYジャパンエリアCCaSSリーダーの牛島慶一氏をお招きし、当社常務執行役員の稲垣精二が対談を行いました。

牛島 慶一 氏 株式会社日立製作所のビジネスソリューション事業部、CSR本部等を経て、2013年にEY総合研究所株式会社に入社。2014年8月より現職。稲垣 精二 常務執行役員 グループ経営戦略ユニット長 兼 経営企画部長

開催概要

テーマ ガバナンスで日本を索引するロールモデルになるために
社外ステークホルダー
  • EYジャパンエリアCCaSS リーダー 牛島 慶一 氏
当社からの参加者
  • 常務執行役員 グループ経営戦略ユニット長 兼 経営企画部長 稲垣 精二
  • 社名、従業員および外部の方の所属・役職は当時のものです

二つの立場で責任を果たす

牛島氏 私から見れば、御社はある意味、今後の金融のあり方を示す存在になり得ると思います。株式会社化し、機関投資家としてスチュワードシップ・コードに取り組む立場と、上場会社としてコーポレートガバナンス・コードに取り組む立場、二つの顔を持っています。これまで持合いで閉鎖的と言われた日本の金融機関と企業との関係が、両コードをきっかけにどう変わっていくのかが問われる中、御社の取組みに注目しています。

稲垣 まず機関投資家としての立場からお話しますと、私どもは責任ある機関投資家としての役割を果たすために、昨年「スチュワードシップ活動方針」を策定しました。二つのコードが動き出した現在、真摯に経営に取り組まれている投資先企業との対話に臨む中で、建設的な議論ができているという手応えを感じているところです。

牛島氏 投資を通じて世の中にどのようなインパクトを与えていくのか――目先の利益やコスト削減を確実にしつつも、より持続可能性や長期的な視点に立った投資活動をしなければいけません。

稲垣 まさにそれを実現したいと思っており、ESGファンドにも取り組んでいます。財務分析を中心に行ってきたアナリストが非財務側面からも企業を分析することで、当社の投資評価も徐々に変わっていきます。それこそが投資家としての社会的責任であると考えています。

牛島氏 株式会社として、自社のガバナンスも大切です。御社は投資家として投資先に適正なガバナンスを要求する立場です。ともすると、他人に厳しく自分には甘い、といった二枚舌とも言われかねない特殊な立場にあり、これからのロールモデルになるような会社に発展することを社会が期待しています。

稲垣 当社は、創業当時よりかなり真面目にガバナンスを考えてきた会社であると自負しています。日本で最初の相互会社を設立したことも、大手生命保険会社の中で最初に株式会社化したことも、「お客さまを第一に」という理念のもと、40~50年単位でステークホルダーに対してどのように責任を果たすべきなのかということを真摯に考え抜いた結果です。

牛島氏 上場会社として株主と対話された際の反応はいかがですか。

稲垣 上場当初、海外への事業展開に関する話はなかなかご理解いただけませんでしたが、5年目にして実績が見えてきたこともあり、ようやくご理解いただけるようになってきたと感じています。

牛島氏 特に海外の長期投資家は、「自社の長期的戦略が、株主をはじめとするステークホルダーの長期的利益にどのように結びつくか」あるいは「長期的な価値創造のスト-リーは」といった点に関心があります。一方で、日本企業の多くは、この点における説明が不十分とよく聞きます。

稲垣 私どもも、財務目標だけでなく、どこに向かって何を実現したい会社なのかということや、会社の本質をしっかりと伝えていきたいと考えています。また、こうした話に耳を傾けていただける投資家と対話をすると、私どもも視界が開けますし、ビジョンにご賛同いただくと、背中を押していただけた気がします。

グローバル経営の鍵はダイバーシティ

牛島氏 私は、本当の意味のグローバルなガバナンスの基礎をなすものがダイバーシティであると考えています。グローバルに経営を行っていく上では、日本で育ってきた人だけの感性や視点に頼っていたのでは限界があります。会社の理念や価値観を共有していることを前提に、多様な人財が絶対に必要だと思います。そうした自分にはない視点を持って多面的に経営を見てこそ、グローバルな意思決定を可能にするものと思っています。

稲垣 その点については課題意識を持っています。昨年、シンガポールに地域統括会社を設立しましたが、公用語は英語で、将来的に従業員の半分以上はノンジャパニーズとなる予定です。その地域統括会社ではグローバルな視点とローカルな視点を併せ持った人財が活躍することになるでしょう。2016年10月に持株会社体制に移行する方針ですが、持株会社の運営もこのような視点を持った人財が担っていく必要があると感じています。そうした人財を育成する一環として、当社グループでは、グループ各社から実務レベルのスタッフが集まり、テーマごとにface to faceのミーティングを行うGMC(Global Management Conference)を開催しています。こうすることで、お互いの課題意識や取組みに刺激され、学び合うことができると考えています。

牛島氏 グローバルなマネジメントは、組織的な仕組みで構築する部分もありますが、インフォーマルなネットワークがどれだけ機能するかといった、やはり「人」に依存する部分も大きいと思います。信頼できる人間関係をグローバルに構築することは重要です。相互に学び合って、感性を磨いた方々がいずれ要職に就けば、グローバルな視点とネットワークを活用した意思決定が容易になるでしょう。

課題先進国の日本から健康経営を発信

牛島氏 日本は元来、天然資源が少なく、また高齢化や自然災害など、世界に先駆けてさまざまな課題や社会的制約に直面している課題先進国です。だからこそ、そういった課題に真正面から取り組んで生まれたソリューションは、今後の日本の競争優位につながります。そこに企業がどう関わっていくのか―保険もその役割を担う分野だと思います。

稲垣 私どものお客さまの多くの方は団塊の世代です。その方々が介護や看護が必要な年代になってきたときに、どのように対応していくのか――当社には4万人を超える生涯設計デザイナーがおり、必ず定期的にご契約者さまを訪問していますので、タイムリーな健康情報の提供や迅速な給付金のお手続きができます。そうした当社のビジネスモデル上の強みを生かして社会に貢献することができれば素晴らしいと思っています。お客さまに健康寿命を延ばしていただくことは、お客さまにとっても日本全体にとっても望ましいことであり、結果として保険会社としてもお引き受けしている保険契約全体の健全性が向上します。お客さまに喜んでいただけるサポートをお届けできるよう、各種専門医療機関と連携協定を結び、3大疾病や長寿医療に関する最新の情報をご提供できる体制を構築しています。また地方自治体とも連携し、地域の皆さまに健康情報・啓発情報のご提供を進めています。

牛島氏 御社ならではの事業を生かした取組みですね。今日は非常に興味深いお話を伺えました。お客さまに対して本当に真摯に期待に応えるべく向き合っている姿勢は、私自身勉強させていただきました。御社はこれからのロールモデルになるような会社に発展することを期待されている企業だと思います。

稲垣 本日はさまざまな示唆に富んだお話をいただき、まだ課題はたくさんあると再認識しました。ありがとうございました。

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