Q&A ステークホルダーの皆さまの関心事項 第一生命ホールディングス株式会社 代表取締役社長 稲垣 精二

Q1低金利環境下における第一生命グループの
経営戦略・資本政策について教えてください。

A1

[経営戦略]

当社グループでは、中期経営計画「D-Ambitious」より、国内生命保険事業、海外生命保険事業、資産運用・アセットマネジメント事業を「3つの成長エンジン」と位置づけ、それぞれの事業の強化に取り組んできました。

2016年より、日本においては日本銀行のマイナス金利政策に伴う著しい低金利環境が継続し、国内生命保険事業においては、販売・資産運用などの逆風となっています。しかし、「3つの成長エンジン」による成長戦略はいささかも変わりません。むしろ、これまで進めてきた事業分散・地域分散により、日本国内における低金利の影響を最小限に抑え得るグループ態勢を整えつつあると考えています。海外事業の利益貢献は、「D-Ambitious」スタート後の2年で大幅に高まりました。また、アセットマネジメント事業もグループ2社を通じた日本および米欧市場へのますますのアクセス強化により、利益の拡大が期待されます。もちろん国内生命保険事業でも低金利環境を踏まえたリスクコントロールを行いつつ、お客さまのニーズに幅広く応える商品・販売戦略を維持することで保険収益を確保します。また、資産運用収益確保に向けたさらなる資産運用の高度化にも取り組みます。さらに、持株会社体制に移行したメリットを最大限に活かし、機動的な資源配分と迅速な意思決定の実現を通じ、成長戦略を加速させていきます。こうした既存事業の強化に加え、今後の複雑かつ急激な環境変化やお客さまニーズの多様化などに対応する「InsTech」についても、さまざまなパートナーとともに積極果敢に展開していきます。

3つの成長エンジン

3つの成長エンジン

[資本政策]

当社グループでは、エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)に取り組んでいます。ERMとは、リスクを適正にコントロールし健全性確保を図る一方で、より高い利益が見込める事業などに資本を配賦していくことで資本効率・企業価値向上を実現する取組みです。

前述のとおり、国内における低金利環境が続きましたが、第一生命を中心にデリバティブを活用した金利リスクの削減に取り組むとともに、一時払の貯蓄性商品の販売抑制や前納保険料の割引率の見直しなどを実施しました。健全性の向上に向けては、グループ各社が事業活動を通じた利益の積上げによる資本水準向上に取り組んだほか、第一生命が2016年7月に米ドル建永久劣後特約付社債(25億米ドル)を発行するなど、自己資本の一層の充実を図りました。

今後も、ステークホルダーの皆さまの期待に応えるべく、個々の事業の収益性向上と最適な事業ポートフォリオの構築に取り組み、資本効率や企業価値の向上を目指します。また、国内の長期化する低金利環境など、厳しい金融経済環境を踏まえ、ERMの枠組みに基づく取組みをより一層強化し、グローバルに活動する保険会社に対する新たな資本規制が検討されていることも踏まえ、引き続き財務健全性の維持・向上に取り組みます。

当社グループの資本基盤

当社グループの資本基盤

Q2中期経営計画の経営目標を変更したのはなぜですか。

A2

当社グループは、2015年4月からの「D-Ambitious」スタート以降、3つの成長エンジンによる成長戦略を着実に実行するとともに、成長戦略を支える経営態勢・ガバナンスを強化してきました。また、国内における著しい低金利環境、英国のEU離脱決定などの世界各地での不透明な政治情勢などが続いた厳しい経営環境下にあっても、資産運用リスクのコントロールなどに取り組むとともに、海外生命保険事業からの収益拡大などが奏功した結果、前中期経営計画期間との比較において大幅な利益水準の向上を実現してきました。

しかし、計画策定当初の想定を超える低金利環境の継続や大幅な円高の進行などにより、いくつかの経営目標の進捗が影響を受けました。こうしたなか、前述したリスクコントロールなど必要な対応を行ってきましたが、短期的な環境変化に対する過度な対応は、将来の成長力や利益生産力を毀損する負のスパイラルを招きかねません。このため、「D-Ambitious」の計数目標のうち、EV成長率、資本充足率(経済価値)※1、利益目標については、当社グループが短期的な環境変化だけに振らされず、中長期的な視点に立って成長戦略を着実に遂行する正のスパイラルを志向するために変更しました。

具体的には、EVや資本充足率(経済価値)はその特性上、足元の経済環境下では、経済変動要因によるマイナスを新契約獲得などの経営努力のみで補うことは困難です。しかし、資本コストを上回る資本効率の確保と資本充足率の着実な向上を中長期的に目指していくことは経営上極めて重要であることに変わりはありません。したがって、これら指標の本質的意義に鑑み、3年の期間を区切った目標から「中長期的に目指す姿」に変更しました。また、利益目標は金利・為替の大幅な環境変化を受けて2017年度の見通しを引き下げました。そのうえで、持株会社体制への移行を踏まえ、同体制下におけるキャッシュフロー運営の強化に相応しい指標である「グループ修正利益」※2に変更しました。

このような考え方に基づき、当社グループは短期的な経済環境の変化に一喜一憂することなく、持続的な成長の実現を目指していきます。

  • ※1 第一生命グループでは、経済価値ベースの資本充足率(ESR)を計測し、ERMに活用しています。ESRは、資産・負債を足下の市場金利などで時価評価した指標で、一定のストレスに対する資本の余力を示す指標です。なお、現在検討されている国際資本規制においても、経済価値ベースの規制となることが見込まれています。
  • ※2 グループ修正利益の詳細についてはQ3を参照ください。

中長期的に目指す姿

EV成長率(RoEV) 中長期的に平均8%成長を目指す
資本充足率(経済価値) 中長期的な時間軸で170~200%到達を目指す

経営目標(計数目標)

グループ保有契約年換算保険料 2017年度末実績9%成長(対2014年度末)
グループ修正利益 2017年度1,800億円(定義変更後)
グループ修正利益に対する総還元性向 D-Ambitious期間中に40%

Q3持株会社体制における株主還元方針を教えてください。

A3

当社グループの2016年度株主還元は、前年度比8円増配となる1株当たり43円の株主配当と2017年5月15日に公表した自己株式取得(上限230億円)により、総還元性向35%を達成する見込みです。株主配当については4年連続増配、また3年連続の自己株式取得の実施となります。今後も安定的な株主配当を基本としつつ、業績動向などを踏まえた機動的な自己株式の取得により、株主還元の充実を図るとともに、中期経営計画の期間中に総還元性向40%に引き上げる方針です。

また、2016年度には持株会社体制に移行したことも踏まえ、株主還元原資となる利益の定義を変更しました。具体的には、連結会計上発生する一時的な組織再編損益やのれん償却など、実質的でない会計上の評価性損益を含まない各事業のキャッシュベースの実質利益をもって株主還元の原資とすべく、新たに「グループ修正利益」を定義しました。

このように、持株会社体制への移行を契機として、キャッシュフローマネジメントをこれまで以上に強化するとともに、グループ各社が創出した利益を成長分野へ配賦することなどにより、利益の拡大や資本効率向上にも取り組み、その成果を適切な利益還元につなげることにより、ステークホルダーの期待に応えていくことを目指しています。

株主還元実績

株主還元実績

※2013年10月1日に実施した株式分割を踏まえた換算値を記載。