保険ビジネスにテクノロジーを融合させた「InsTech」を推進する第一生命グループは、2017年3月、「健康第一」アプリをリリースしました。このプロジェクトを担当した国内営業企画ユニット ユニット長の北堀貴子と開発パートナーのアクセンチュア(株)林岳郎氏に聞きました。
自発的な健康増進の取組みを支援する「健康第一」アプリをリリース
──InsTechとは、どのような取組みなのでしょうか。
北堀 InsTechは「Insurance(保険)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉です。AI(人工知能)などの技術を活用して保険にイノベーションを起こすことを目標に、「ヘルスケア」「アンダーライティング」「マーケティング」の3領域で商品・サービスの開発や業務の変革を進めています。欧米など海外の保険業界ではこうした取組みが先行していることから、InsTechの推進にあたっては、グローバルなネットワークを持ち、各業界の先進事例にも知見が豊富なアクセンチュアさまに協力をお願いしました。
林 2015年にお声かけいただいてから、海外の先進企業を一緒に視察するなど、パートナーとして密に意見交換してきました。InsTechのコンセプトが明確になった後、クロスファンクショナルなプロジェクトチームを編成して、ヘルスケア領域の取組みとしてリリースしたのがスマートフォン専用アプリ「健康第一」です。
北堀 生命保険会社には、社会保障制度の補完機能も求められますので、第一生命グループのご契約者に限らず、多くの方の健康増進に対する動機付けになればというのが基本的発想です。アプリを入口に健康づくりに興味を持ち、自発的な取組みを実践してもらえればと思っています。
複数企業が参加するエコシステムで開発スピードを加速
──アプリ開発は、どのように進めたのでしょうか。
北堀 第一生命グループの強みは、過去から蓄積したお客さま情報の一部として医療ビッグデータを保有していることです。これを活用してInsTechを進めるには、グループ内外の複数の企業や団体が強みを持ち寄って、プロジェクトを推進する必要があります。いわゆるエコシステムの構築です。その面でアクセンチュアさまのネットワークやコーディネート力は、大きな力になりました。
林 当社の強みは、多様な課題解決サービスを、グローバルで均質に展開できることです。コンサルティングはもちろん、戦略推進に必要な企業の選定、具体的なITソリューションへの落とし込みまで、お客さまに寄り添い、目に見える成果が上がるよう支援しています。
北堀 アプリのリリースで重視したのはスピード感です。戦略や機能要件について社内で検討を重ねた上で、アクセンチュアさまから他業界や海外での成功・失敗事例を教えていただき、企画をブラッシュアップしていきました。
林 その後の他業界を巻き込んだエコシステムの構築やアプリ開発などは、当社がリードしました。当社の知見やノウハウを活かして、俊敏な開発を推進し、4カ月で開発を完了させました。第一生命さまの組織がフラットなおかげで、すべてのプロセスに関して素早く意思決定してもらえたことが非常に大きかったと思います。
“健やかに生きる、幸せになる”をコンセプトに、よりよい未来を創造
──今後どのような展開を考えていますか。
北堀 まずは「健康第一」アプリを利用者のニーズに応えるものにバージョンアップしていくことです。同時に、第一生命グループの強みであるビッグデータを活用した新商品開発も進めます。例えば、2016年10月から、グループ社員にウェアラブル端末を配布しており、歩数・睡眠時間データと健診・レセプトデータの関係性を分析する取組みを始めていきます。また、InsTechのような取組みが先行している米国や豪州の海外グループ会社との情報共有も強化していきます。
さらに、パートナーの拡大も進めていきます。先頃当社グループは、日本調剤さまと業務提携して、保険商品の販売や服薬指導のアプリ開発などで連携を深めています。将来的には、両社のビッグデータを活用したソリューション開発も視野に入れています。他にも、国立がん研究センターさまなどとの共同研究も始めています。
林 当社は第一生命さまとの取組みを通じて、多くの方が“健やかに生きる、幸せになる”ことこそがInsTech推進の意義であるという価値観を共有しています。今後も、互いの強みを活かし、共によりよい未来の創造に貢献していければと考えています。