ガバナンス強化に向けて
~第一生命の取組みと社外取締役の役割~

第一生命の社外取締役であるジョージ・オルコット氏に、日本の企業や第一生命のガバナンス強化に向けた取組み、社外取締役の役割などについてインタビューしました。

社外取締役 ジョージ・オルコット 慶應義塾大学商学部・商学研究科特別招聘教授 オックスフォード大学卒業。1986年S.G. Warburg & Co., Ltd入社。SBC Warburg東京支店長、UBSアセットマネジメント(日本)社長、UBS Warburg東京マネージングディレクターなどを歴任。2005年にケンブリッジ大学ジャッジ経営大学院にてPh.D取得。2008年より同大学院シニア・フェロー。2014年4月より慶應義塾大学商学部・商学研究科特別招聘教授。2015年6月より第一生命社外取締役。

開催概要

テーマ ガバナンス強化に向けて~第一生命の取組みと社外取締役の役割~
ステークホルダー 社外取締役 ジョージ・オルコット
  • こちらのダイアログは第一生命アニュアルレポート(2016年7月発行)制作にあたり開催したものであり、所属や役職は当時のものとなります。

Q. 昨今、ガバナンスについて注目が集まっていますが、日本企業全般、そして第一生命のガバナンスについて、どのように評価されていますか。

A. 日本企業のガバナンス改革はよい方向に向かっていると思います。従来の日本企業の取締役会は、ほとんどが社内の出身者で構成され、執行役員会と取締役会で同じ人たちが同じ議論をするという課題がありましたが、現在では、東京証券取引所の上場規則により、2名以上の社外取締役の導入を促す動きも広がっており、客観的に意思決定プロセスをチェックさせるシステムが定着しつつあります。
この点において、昨年度、第一生命が行ったガバナンス改革の1つとして、社外取締役を2名から5名に増員したことが挙げられます。これにより、経営の透明性・客観性がより向上したと思います。一方で、社外取締役をやみくもに増員すればよいというわけではありません。そのメンバー構成も重要だと考えています。もし、社外取締役のメンバー構成に偏りがあった場合、さまざまな視点からの意見が生まれず、企業への貢献度も半減してしまうからです。社外取締役は、ある議題に対していろいろな角度から質問し、その一つ一つを確認し納得していく。このプロセスを通じて、経営全体が同じ方向に進むのだと考えています。
第一生命の社外取締役は、弁護士、投資銀行経験者、金融行政経験者などバランスの取れたメンバーで構成されており、その中には私のような外国人や女性も複数名含まれています。そして、それぞれの社外取締役は生命保険業界の専門家ではないものの、自身のキャリアを踏まえた観点から積極的に意見を述べており、取締役会では非常に活発な議論が行われています。

Q. 取締役会において、社外取締役に求められる役割をどう考えていますか。

A. 社外取締役の役割は「これをやるべきだ」と具体的な案件を提言することではありません。社外取締役は、企業がビジョン・ミッションを明確に定め、それを実現するための戦略があるか、その戦略を支えるための資源があるかについて確認します。企業として戦略的なフレームワークがないまま、例えば大型の投資案件が進んでしまうことがないように、その戦略が生み出す将来像に対する納得感などを確認することが社外取締役の役割であると考えています。したがって、個別案件のみならず、中長期的な戦略に関する議論も非常に大切になってきます。
また、リスク管理体制のチェックも重要な役割です。社外取締役は、企業がさまざまなリスクに対応するためのリスク管理フレームワークが備えられているかについて確認する必要があります。

Q. グローバル企業においてガバナンス面で考えていくべきことは何でしょうか。

A. 日本の上場企業において、女性の社外取締役は、2001年から2014年の間で、150人から816人にまで増えました。それでもOECD諸国における数と比べるとまだ少ないと言えます。さらに、外国人の社外取締役は232人から274人とそれほど増えていません。これは、さまざまな視点からプロセスチェックを行うという社外取締役の役割を考えれば、課題のひとつであると考えています。
また、日本企業全般において、株主・投資家の声を経営に反映させる余地は大きいと考えています。イギリスでは、筆頭社外取締役が存在し、彼らが直接機関投資家と対話を行うことが義務とされています。こうした運営はまだ日本には馴染まないとは思いますが、日本では海外を含めたIR活動結果を取締役会にフィードバックしない企業も依然として多く、改善すべき課題であると思います。その点で、第一生命では海外を含めたIR活動の際に寄せられた株主の声もしっかりと取締役会に報告されています。
今後も、取締役会にて株主を含むステークホルダーの意向を反映した議論を行っていくことが大切です。今後、第一生命は国際的にも存在感を高めていくと思います。存在感が高まるほど、より強固なガバナンス態勢が求められます。今後もガバナンス強化に向けて不断の取組みを実施していくことが大切だと思います。

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