第一生命に求められる社会的役割とは

2012年6月、「生命保険の意義を見直し、第一生命に求められる社会的役割は何か」をテーマとしてステークホルダーダイアログを開催しました。当日は、有識者の2名を交え、活発な意見交換が行われました。

開催概要

テーマ 第一生命に求められる社会的役割とは
社外ステークホルダー
  • 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 常任顧問 古谷 由紀子 氏
  • 高崎経済大学経済学部 教授 水口 剛氏
当社からの参加者
  • DSR推進室 室長 平本 洋
  • 補佐役 兼 DSR品質推進部 部長 菅原 功
  • 経営企画部 部長 山口 仁史
  • 社名、従業員および外部の方の所属・役職は当時のものです

震災を経て「お客さま第一主義」を見つめ直す

公益社団法人
日本消費生活アドバイザー・
コンサルタント協会
常任顧問
古谷 由紀子 氏

古谷氏 第一生命には全社に浸透する「お客さま第一主義」があったからこそ、東日本大震災でも迅速な対応ができたのだろうと感じています。今回の震災に学び、具体的に業務の進め方等に反映されたものはありますか?

菅原 東日本大震災では、保険金をお支払いすべき受取人と、なかなか連絡がつかないというケースが多数ありました。お客さまを契約者、被保険者だけととらえるのではなく「お客さま=生活者」という視点を持ち、万一のとき保険金はどなたの生活を支えていくのかを把握・確認するため、「お客さまサービス情報登録シート」へご家族の連絡先等のご記入をお願いしたり、ご家族で集まる機会をつくっていただき、契約内容をあらためて共有するなど、全社を挙げて一層の取り組みを推進しています。

古谷氏 両親が共に亡くなり、未成年の子が保険金を受取るケースもあるでしょう。今後どのように生活を再建し、将来の家計を考えていくかというアドバイスも、保険会社に期待される役割です。

補佐役兼DSR品質推進部長
菅原 功

菅原 当社でもそうしたご相談に応じています。お客さまの事情に合った適切な保険があればご提案する、それ以外の金融商品が適している場合はそちらをご案内するなど、築いてきた信頼関係のもと対応させていただいています。

水口氏 今回の震災への対応では、フェイス・トゥ・フェイスの営業チャネルの重要性が際立ったのではないかと思います。消費者にとって、自分が抱えるリスクとそれに備える適切な保険を合理的に判断してアドバイスしてくれる存在は貴重でしょう。

平本 形のない生命保険というものを扱っているからこそ、営業職員の人間力は事業推進の要です。また、普段お客さまと直接対面しない職員でも、事務工程や通知物等、間接的なお客さまとの接点を持っています。自分の業務の先にはお客さまがいることを意識して、すべての職員がお客さま視点に立ってPDCAを回していくことがDSRの推進であり、「安心の絆」をお届けする上で大事だと思っています。

新創業を機に、より進化させるDSR経営

高崎経済大学経済学部 教授
水口 剛 氏

水口氏 2010年度に株式会社化されましたが、生命保険会社という性質上、「お客さま第一主義」と「株主への利益還元」を両立するのは簡単なことではないだろうと感じます。契約者のためを思えば「安い保険料・高い保険金」がベストですが、株主の利益を考えると「高い保険料・安い保険金」になりがちです。契約者にも株主にも高い価値を提供するためには、資金を高効率で運用しなければなりませんが、それはリスクの高い経営につながります。バランスをいかにとるかが重要になるのでしょう。

山口 株式会社化には、「お客さまへの品質保証を将来にわたって確かなものとするために、環境変化に即した経営を行える柔軟性を確保する」という狙いがありました。その背景にもやはり「お客さま第一主義」があり、今後も決して外してはならないものです。バランスが重要という点はご指摘の通りで、お客さまの支持を失えば経営は成り立ちませんし、株主からの信頼を失うことにもつながります。中期経営計画の中でも経営品質を特に重視しているのはそのためです。

経営企画部 部長
山口 仁史

古谷氏 少し気になるのはCSRの本来の目的は企業の持続的成長ではなく、社会の持続的発展であるという視点を第一生命がどれだけ持てているかということです。お客さま満足への取り組みは本業そのものであり、CSRは社会の課題が何かを認識し、それに応えていくべきものです。「こういう保険商品があり、こういうリスクに対応できる」という商品提案では十分ではなく、「お客さまはどんな生活をしていて、どんなリスクがあるか」を入り口にすることで、提案の質が変わるように思います。場合によっては、そのお客さまに必要なのは保険商品ではないという結論にたどり着くこともあるかもしれません。

山口 ご指摘の通り、保険商品を前提にしない幅広い提案、いわば家計全般のコンサルタントとしての提案は、今後一層発展させていかなければならない視点だと感じています。2010年より推進している「新・生涯設計」ではその点を重視しており、お客さまの家族構成やライフステージ、抱えている不安等を真剣にヒアリングした上で保障を考え、安心のご提供を目指す枠組みとしています。

社会により良い連鎖を生む事業展開へ

DSR推進室長
平本 洋

水口氏 保険ではなく安心を売るという考え方は重要です。わが社は保険を売る仕事だと思うと「どんな保険があり、どうお客さまに役立つか」と考えますが、安心を売る仕事だと思えば「どうすればお客さまが健康に暮らし、保険を使わないですむか」を考えることになります。病気になる人が減れば保険金の支払いが減り、結果として第一生命の利益にもつながります。つまり、社会に貢献しながら株主にも利益還元できるということです。生活習慣のコンサルティングなど健康福祉に取り組むことは、お客さまへの中心的なサービスになってくるのではないでしょうか。

平本 当社ではまさにお客さまと職員の健康増進に向けた取り組みを本格的にスタートしました。従来主流だった万一に備える保険から、長生きするための保険にニーズがシフトする中、着実に成果を出していきたいと思います。

水口氏 もう一つ忘れてはならないのが、第一生命は巨額の資金を運用する機関投資家でもあるという点です。どのような企業に投資するかの判断が、社会にも影響を与えます。投資の際、環境にも配慮しなければ、間接的に地球環境を悪化させ、タイの洪水のような被害が出て日本企業にも影響し、結局は、日本企業に投資する第一生命自身の運用成績も悪化します。その意味で、環境に配慮した投資は保険会社にとって合理的な選択だといえ、運用の中にそうした原理原則を組み込んでいくことは重要でしょう。

平本 おっしゃる通り、資産運用においては、地球環境への配慮、いわば「宇宙船地球号の乗組員」という視点を持ちながら取り組むことが重要であると感じています。お二人とお話をさせていただくことで、広い視点で気付きを得ることができました。これからも、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションをさらに発展させ、社会に「安心の絆」をお届けする使命を全うしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

ご意見・ご感想をお聞かせください 新規ウィンドウで開きます